スギを切れば、洪水と水不足が減る
洪水と水不足が減ると言うと、いや、水が多いのか少ないのかどっちやねん、と思うかもしれませんが。雨の量というのは、洪水や水不足には、あまり関係ありません。むしろ「山の保水力」のほうが、大きな影響をもたらします。
保水力とは、その名のとおり、水を保つ力です。スポンジを地面に敷きつめたと思ってくださ い。そこに、ジョウロで水をまきます。ジョウロの水は、スポンジに吸収されていきます。多少は流れ出るでしょうが、ある程度の水は、スポンジが吸収してしまいます。
では、これがコンクリートの地面だったら、どうでしょうか。ジョウロで水をまいたら、そのまま流れていってしまいます。コンクリートの地面は、スポンジの地面に比べて、水を保つ力が弱い。つまり、保水力が無い、ということです。
日本の国土の7割は、山です。山には土があります。土というのは、スポンジのようなもので、水を吸収します。山に土が多ければ、スポンジの地面のように、降った雨をためておくことができます。降った雨は、すぐに流れ出ることはなく、何日も、時には何ヶ月も何年もあとに、染み出してきます。それが、湧き水です。
では、もし山に土が少なければ、どうなるでしょうか。コンクリートの地面のように、保水力が少ない、ということです。山に雨が降れば、それは一気に流れ出てしまいます。すなわち「洪水」が起こりやすくなります。一方で、土に染み込む水が少ないので、湧き水が少なくなります。湧き水が無ければ「水不足」になります。
保水力の少ない山は、洪水と水不足を同時に引き起こすのです。
スギやヒノキの林というのは、自然の森に比べると、保水力が少ないです。なぜなら、スギやヒノキは落葉樹ではないので、落ち葉をそんなに作らないのです。土は、落ち葉を昆虫や微生物が分 解することで、作られます。そもそも、土の材料となる落ち葉がなければ、土が生まれないのです。
日本全国に広がったスギやヒノキの林は、山の土を減らし、洪水と水不足を引き起こしています。これらを自然の森に戻すことで、洪水被害も、そして、水不足の被害も減らすことができるのです。
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